シオンズアイズ
二人で馬に乗り、この女を両腕で守るようにしながら手綱をさばき、時々甘く見つめ合っていたのだから。

なんと恨めしいことか。

王女……リラは、ファルに恋をしていた。

初めてファルを見たのは、去年招かれたリーリアス帝国の記念式典であった。

想像以上に素晴らしい王子に、リラは一瞬で恋に落ちた。

王子ファル以上に素晴らしい男などきっといまい。

リラはガイザ帝国に帰る道中、父であり、王であるガイザに、ファルと結婚したいと告げた。

王女である自分と、王子であるファルなら、身分的にも問題ない。

ところが無情にもガイザは首を横に振った。

白金族人間と黄金族人間の争いに巻き込まれれば、何の力も持たない小国であるガイザ帝国など、ひとたまりもない。
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