シオンズアイズ
その時である。

シオンの眼にひとりの青年が飛び込んできた。

あ……!!

馬に乗り、右手に剣を携えて、鮮やかな長い羽飾りと一際派手なマントをなびかせているその青年は。

「ファル……!!」

シオンの胸に熱い想いが込み上げ、それが荒れ狂う風のように心の中をかき乱した。

「ファル、ファル!!」

オーディンは、激しく多色化するシオンの瞳を見つめながら口を開いた。

「呼んだって聞こえねーよ」

オーディンの言葉にシオンは落胆した。

こんなに、こんなに、近いのに。

見れば、ファルを援護する形でアルゴとジュードが控えており、城へと続く一際高い坂道に、マーカスの姿が見えた。
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