シオンズアイズ
今まさにファルは、シリウスと雌雄を決しようとしているのだ。

馬の蹄が砂埃を生み、霧のように視界を遮る中、ファルは弾丸のように一つの方向へと突っ走った。

怯む者はひとりもいず、皆があとに続く。

シオンは、食い込んだ自分の爪が皮膚を傷つけているのにも気づかず、ファルを見つめた。

その時である。

「お前達!!早くかかれ!敵を迎え討て!」

悲鳴のような声が響いて、シオンは息を飲んで床を見つめた。

見ると、シリウスが従えていた兵達が恐怖に顔を歪め、後ずさる瞬間であった。

シリウスの、驚愕に満ちた瞳が味方の兵の背中を捉え、彼は尚も叫んだ。

「待て!待てーっ!何処へ行くんだっ!」
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