シオンズアイズ
幼馴染のアルゴもジュードも、弟のように可愛がっていたロイザも、敵軍の中に埋もれて消え、消息が掴めないままである。

率いた軍が散り散りになったのは、自らのせいだと責めずにはいられない。

黄金族人間の王であり、父でもあるダグダは、ボロ布のようないでたちで帰路についた王子を一瞥すると、何も言わず、戦略を練る為に側近を連れて立ち去った。

ファルは父王ダグダの雄大な後ろ姿を、ただただ唇を噛みしめて見送る他はなかった。

父王ダグダはファルの憧れである。

ダグタは誰よりも勇敢で、誰よりも強い男であり、王の中の王である。

彼の武器は、荒れ狂う雄牛をひとふりで倒せる刃付きの棍棒で、そんな巨大な棍棒を片腕で自由自在に振り回せるのは、ダグダしかいなかった。
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