おれんじの絆
そして、私達は出かける用意をしていよいよ出発。
将貴は何も考えずに同じ学年の友達と自転車で出かけてしまった。
「準備できたか?」
「あ、うん」
「おし、じゃ行くか」
そう言って蓮はドアを開けてくれた。
何も言わないし、何も顔に出さないけど
さりげなく優しい。
そこがまた魅力だったりする。
そして、2人で電車に乗ってデパートへ行った。
そこで、教えてくれたのは蓮行きつけのスポーツ店。
店員さんとは顔見知りという仲らしい。
「いつも、ここで買ってるんだ」
「ふーん…」
今までスポーツ店なんて関わりなかったから入ったこともなかったけど、なかなかいい店だった。
そこで、バッシュとケース、ジャージ、スウェット、パンツ、エナメル…
全部好きな色のピンクでまとめると、蓮がにやっとして、
「そんなピンクだらけのやついねーぞ」と言って鼻で笑われた。
「なら全部青にする」
「そゆ問題じゃねぇよっ」
すかさずツッコミを言われ、思わず笑ってしまった。
このやりとりが本当に好きだった。
それから私の好きなお店に行って、バスケの勉強のためのノートや、ペンなどを揃えて買い物を終了した。
でも、まだ時間が余っていたので2人でカフェに行った。
「今日楽しかったね」
そうだなって言ってほしいな…。
「ほんと楽しかった」
「えっ」
予想以上の返事が嬉しくて、思わず変な声をだしてしまった。
よかった、つまんなくなかったんだ。
「…なぁ」
「ん?」
蓮の表情がいきなり険しくなった。
「理沙、俺のおふくろ嫌いだろ?」
「…」
正直言ってあまり好きになれないし、これからも好きになれる自信なんてない。
だからといってこんなこと言ったら…
「だろうな」
そんな私をみかねて、蓮は話してくれた。
「俺のおふくろ、最近離婚したばっかで今ずっと機嫌悪いんだ。ごめんな」
「蓮が誤ることじゃないよ。蓮は悪くない」
「…そうだな」
そう言って蓮は寂しそうにどこか遠くを見つめて微笑んだ。
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