お前は誰にも渡さない
ぼーっとしていると拓ちゃんが私のそばへ駆け寄ってきた。
「志織っ?大丈夫か??何された」
「・・拓ちゃん。ううん・・何もされてない・・・・」
拓ちゃんの顔を見てホッとして体の力が抜けていき、軽く拓ちゃんに寄りかかる形になった。
「お、おい・・志織???」
「なんか・・あの、橘先輩に告白されて・・・一目惚れしたって・・付き合おうって・・それで、先輩のこと何も知らないのにって言ったら先輩は入学式から知ってて・・・えーと・・私がクラスの場所聞いたのが先輩で・・・・それで・・・」
橘先輩は私の返事なんて聞かずに、
近づいてきて・・・キスしようとしてきて・・・・
「びっくりした・・・」
「・・・おちつけ志織」
頭をポンポンと撫でてくれた。
あ・・そうだそんなことより拓ちゃんに謝らないと!
私はガバッと体を起こした。
「あっ・・・・っ拓ちゃん・・・私と付き合ってるとかいう噂が流れてたんだって・・ごめん」
「え?」
「あの・・橘先輩はそう思ってたみたいで・・・」
「・・・・」
「だから、もしそう思ってる女の子がもし拓ちゃんのこと好きだったら私すごく拓ちゃんの恋愛の邪魔しちゃってるって思って・・・!だからごめんね」
「ばかか・・・そんな噂俺はなんとも思ってないよ。きにすんな?」
「でも、」
「それに、その噂はだいぶ前の噂だぜ?」
「え?そうなの・・?」
「キャプテンはたぶんその噂は嘘だって確信したかったんだろうな・・」
拓ちゃんは再び眉をひそめた。
「とにかく今日は何もされなくてよかったけど、キャプテンには気をつけろよ?」
「ぅ、うん・・・」
「てゆーかマネージャーも無理に続けなくてもい」
「ううんっそれはダメ」
「は?」
「せっかく先生に部活に入れてもらったんだもんっ。初日でやめるのは皆にも先生にも迷惑だよ・・」
「・・・」
「でも橘先輩にはちゃんと気をつける、、」
何かあったらそれはそれで迷惑かけちゃうもん
「二人きりにはならないようにするね」
「あぁ・・・そうだな、まぁずっと俺の横から離れなかったら大丈夫だ。できるたけ俺か誠司と一緒に行動しよう」
拓ちゃんと一緒なら安心だなぁ・・・
よかった、部活に拓ちゃんがいてくれて、
「ありがとうっ」
「・・あれ?今日は城之内は?」
「ぁ、私が今日から部活だから時間が合わなくて、別別に帰ることになったの。」
「へぇ〜珍しいなぁ。じゃぁ一緒に帰ろうか、俺の家寮の向こうだから通り道だし送ってくよ」
「わぁい♪ありがとう♪」
倉庫の戸締まりをしてお互い制服に着替え、校門で待ちあわせをした。
あたりはすっかり夕焼け空でちょっと肌寒くなっていた。