お前は誰にも渡さない
半笑いで話しかけてくるこの人物
「わ、拓ちゃん!」
この人は神田拓磨(かんだたくま)
1年の時に同じクラスで、最初に友達になってくれた人。
顔は良いのに彼女ができない。
中身に問題があるのかな?
でも勉強もできてスポーツできる頼りになるお友達。
テストの時にはお世話になってます。
「またクラス一緒だな、よろしく〜♪」
「あ、そうなんだ♪」
「・・・おまえ城之内の時と喜び方の差がはげしくね?」
「え?そぅ?」
何故か肩を落とす拓ちゃんと
クスクス笑う薫ちゃん。
『はーい皆!ちゃんと並んでー!』
壇上からマイク越しに先生が叫んでいるのを聞いて皆新しいクラスの場所に並び始める。喜びの声や落胆の声、いろんな声が入り混じりながらおのおのの場所へと向かう。
クラス替えは別れでもあり出会いでもあり大切な行事だと私は思う。
私達もクラスの方へ名前の順で並び薫ちゃんに話しかけようと後ろを向いた。
「薫ちゃ・・・あれ?拓ちゃん。」
「何だよ」
「えー・・薫ちゃんの前がいい」
名前の順でてっきり薫ちゃんが後ろだと思ったが私と薫ちゃんの間に拓ちゃんがいた。
私→拓ちゃん→薫ちゃんの順だった
「俺じゃ不満か、」
「ふまん」
「・・・」
パシっ
「ひゃぁっ」
また拓ちゃんはさっきの紙を丸めて頭を叩く。
「ぅぅ・・ひどい」
「どっちがだよ(笑)」
「場所変わって?」
「やだね」
「むぅ……」
そんなやり取りを見かねた薫ちゃんが
「志織。前向きな」
そう冷たく言い放った。
「ぅ〜」
「そうだ志織。ちゃんと前向け」
「…神田うるさい」
「はい…」
たまに薫ちゃんは私と拓ちゃんの保護者のようにも見える…。
校長先生の話を聞きながらコソコソとそんなやり取りをしている中、
全校生徒がガヤガヤと騒ぎ始めた。
『次は3年代表の斎藤充君、前へ』