短編集『秋が降る』
___ふと、洗面台のようなものの横にある赤いランプに気づいた。


「これって、カナさんが言っていた非常ボタン?」

ゴクリとつばを飲み込む。

これを押せば、扉が解除されるって言っていた。


もう、これがラストチャンスだろう。


次捕まったら、確実に殺される。

上がる息を整えると、ボタンのそばへ。
そこから扉までの距離を確認する。

ボタンに手を触れる。

『強く押す』と書いてあるそれを、力いっぱい押した。

ジリリリリリリリリリ!

思ったよりも何倍も大きな音でベルが鳴り響いた。
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