嘘つきなあなたからの恋文。
コタくんと初めて会ったのはその数分後、みんなが席に座るチャイムが鳴る少し前だった。
「コタくん、はじめまして。
私、小池花梨、よろしくね」
「僕のこと知ってるの?
あだ名もオダだし、大抵みんな最初にオダって呼ぶんだけど…」
コタくんの第一印象は落ち着きのある大人しそうな人だった。
「さっき莉里ちゃんに教えてもらったんだ」
「あー、1年の時同じクラスだった朝霧さんか…だからか。
オダってみんな呼んでるけど本名は小田健二、改めてよろしくね、小池さん。
あ、オダって呼んでもいいから」
「うん、分かった。
これから1年よろしくね、コタくん」
この時、私は敢えてオダくんと呼ぶ選択はしなかった。
自分でもなんでオダくんと呼ぶことをしなかったのかは分からない。
みんなと同じになりたくなかったのか、
自分という存在を覚えてもらいやすいと思ったからなのか、
はたまたみんなに本名で呼んで貰えないのが可哀想という正義感が溢れたからなのか……。
25年経った今、何を考えてそうコタくんと呼ぶ事にしたのか記憶にない。
結果、私はオダくんとは呼ばなかった、ただそれだけだ。