嘘つきなあなたからの恋文。
「背けてなんて…してない」
隣に焦った顔して様子を見てくる彼氏に目を向ける。
現にもうこの世にいない彼だけを想っていない様にとこの人と付き合ったんだ、寧ろ現実を見てる方だ。
「ちゃんと現実と向き合ってる」
「それが逃げなんだよ!」
初めて聞いた今岡さんの大きな声に身体がビクついた。
「ちゃんとお別れすることもせずに好きでもない人と付き合ってただ何となしに生きてる。
それが貴方の現状だよ」
「ツっ…」
今岡さんの言葉はさっきのビンタの痛みが今効いた程、体内に熱が駆け巡った。
「小池さん」
今岡さんは私の両腕を強く掴んで近距離で視線が絡み合う。
中学生の時、私は今岡さんはとても弱い人だと思っていた。
理由は知らないが、替わりたく無いのに席を替わったりする辺り、意思を通すことを苦手とする人だと思っていた。
けれど、目の前にいる彼女は
「オダくんに会いに行ってよっ」
強い目をした強い意思を持つ、女の子だった。
「きっとオダくんは貴方に会いたいと思ってる」
「…そんなの分かんないじゃない」
掴まれていた腕を振り払って今岡さんと距離を取るとアスファルトに視線を向けた。
「…コタくんの気持ちはコタくんしか分からない。
そんなデタラメ信じない」
他人が何て言おうとコタくんの本心を言い当てることなんてできない。
「私はオダくんじゃないもの、分かんないよ。
でも、私はずっと彼を見てた…中1の時からずっと彼だけを見てた。
だから彼の本心は分からないけど、彼が誰を大切にしていたかくらい…悔しい位知ってる」
「コタくんの大切な人…?」
「小池さん…
席替えした次の日、私が席を替わってくれないかって頼んだ事…覚えてる?」
「うん…覚えてるよ」
忘れない、だってあの時すごい嬉しかったから。
けどなんで今更そんな話…
不思議に思い、ゆっくりと顔を上げると今岡さんは身体を震わせ、頬に一筋の涙を流していた。