嘘つきなあなたからの恋文。
「え…今岡さん?えっ、ちょっと」
街中で涙を流す今岡さんを通りすがりの人々は不審な目で見てくる。
私は慌てて鞄からハンカチを取り出すと今岡さんの頬に当てた。
「どうしたの?目にゴミでも入ったの?」
そんな焦る私とは裏腹に今岡さんはハンカチを自分で持つこともせず、ただされるだけ、そして私を真っ直ぐ見つめていた。
「今岡さん…?」
「…あの時ね、オダくんに頼まれたの。
『小池さんと席を替わってくれないかな』って」
「えっ…」
今岡さんの涙を拭いていたハンカチがポトリと落ちた。
「そんなの…嘘」
「嘘じゃないよ、席替えをした放課後にね…腕を掴まれて頼まれたの。
『小池さんと席を替わってもらえないかな』って」
「そんな…」
「ずっと小池さんに教えてあげったかったんだけどね…私、オダくんのことが卒業しても未練がましく好きだったから教えるのに抵抗があったんだ。
意地悪しちゃってごめんなさい」
そう言って今岡さんは更に目から涙を零し、身体を震わせながら顔を伏せた。
「今岡さん…」
その涙の意味はきっと私しか分からない。
【まだ】コタくんのことを好きな私にしか彼女の涙の意味は分からない。
「今岡さん…ごめんね」
街中で涙を流すまで必死になって私を怒ってくれて。
「そして、ありがとう…」
現実に戻してくれて。