嘘つきなあなたからの恋文。


「そろそろ先生たちも名前と顔も一致できるようになったし、みんなも飽きたでしょ。

数々の要望があった席替えをします」



担任の言葉に特に前側の席の人たちから喜びの声が上がる。


その傍ら、私たち後ろ側の席の人たちの残念そうな表情。


「席替え嫌だなぁ…」


「小池さん、席替え嫌なの?」


2学期にもなり、仲良くなった大抵の人は“小池”や“花梨”など呼ぶのにコタくんはずっと“小池さん”だ。



「嫌だよ。だって前の席になったらどうやって寝るの?」


もし前の席になったら今簡単にできることができなくなる、絶望しかない。


「そういう人に限って前になる確率が高くなるよ」


そう言って笑顔でクジを引いていたコタくん。


「はいはい、こんな言霊が席運に響くことはありません」


そう言ってコタくんを馬鹿にしながらクジを引いていた私。



その数分後、


「みんなクジ引いたか?

じゃあ、貼るぞー。

ちゃんと数字が書いてある場所に座れよ」



先生が書いた数字が書かれた座席表を見た瞬間、さっき聞いたコタくんの言葉を思い出していた。

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