嘘つきなあなたからの恋文。
「これで本当に全てよ…」
「…うん」
まだ15歳の蒼には重い話しだったのか、そう一言だけ小さな声が返ってきた。
「蒼…母さんの話を聞いてお前はどう思った?」
ずっと黙っていた夫が蒼に問う。
蒼は口を開き、夫と私に応えた。
「正直最初は母さんをからかうつもりでこの話題を出した。
そう、冗談半分だった。
……でも話を聞いた今は何とも言えない気持ちで胸がいっぱいだよ。
なぁ……母さん」
顔を上げ、私を真っ直ぐ見つめる蒼の瞳は真剣な眼差しだ。
15歳はもう大人の枠に入る頃なのかしら……。
蒼の真面目な眼差しを見てふとそう思った。
「母さんは今の【コタくんのいない世界】で生きてて幸せ?」
しかし、少し震えた声で聞いてきた蒼の表情は不安でいっぱいの様子で
まだまだ子供なんだと安心し、そっと頭を撫でた。
「当然よ。
高校を卒後して、それから進学して、就職して、お父さん……湊くんと再会して、結婚して、そして貴方が生まれて…
私はとっても幸せよ?」
心から素直に思ったことを伝えたつもりだ。
けれど目の前の蒼の表情は変わらない。
「それは…もしも【コタくんがいた世界】があったとしても?……」
「【コタくんがいた世界】…?」
蒼の表情からは不安が消えない。