嘘つきなあなたからの恋文。
「確かに今岡さんは可哀想だけどさ。
母さんに隣に戻ってきて欲しい程コタくんも母さんが好きだったんだろ?」
「…この時はまだコタくんが何を思ってそんなことをしたのか全然分からなかったのよね」
今岡さんから聞くまで席の交代の理由も知らなかったし。
でも今なら分かる。
視線を手紙に向ける。
「コタくんは罪な男だな」
「そんなことないわ、素敵な人だった」
「ふーん……そこまで素敵って褒める癖に結ばれなかったんだ。
で、ずっとポケットに隠し持ってる物コタくんに貰ったの?」
「……言い方考えなさいよ」
おちょくるような態度、あの人にそっくりだわ…。
「だって気になるし。ね、早く見せてよ」
「…嫌よ」
「何を今更恥ずかしがってんだよ。
40のババアが恥ずかしがっても可愛くも何ともねぇからな」
「あんた本当口が悪いわね」
「いいからポケットの中身を見せろよ」
本当、この子は…。
机を叩いて急かす蒼にわざとらしく溜め息を吐くと、ポケットから小さな袋を取り出した。