嘘つきなあなたからの恋文。
「コ、コタくん!」
先ほどより大きな声で彼の名を呼ぶと彼はその呼びかけには微笑んで応えてくれた。
彼が微笑んで応えてくれた、ただそれだけのことで私の動揺した心は落ち着いた。
「コタくん」
今度はいつもの大きさで彼の名を呼んだ。
「フフっ、何回呼ぶの?はい、何ですか?」
「えっと…」
名前を呼んだは良いがその次を考えてなかった。
話題…話題…あ、
「文化祭まで一週間切ったね」
「そう言われたらそうだね、もう来週かぁ」
何とか誤魔化せたかな…?
「小池さんのテンパリ具合が実物だね」
「……本当、意地悪だね」
私たちの文化祭は2日かけて行い、1日目はクラスでの合唱、2日目は一般の人も来れる模擬店を行う。
私はその合唱コンで指揮役という大役を任されていた。
「でもこのクラスも博打するよね…音痴を指揮者に選ぶなんて…」
「まぁ、音痴が歌ってもね」
「……」
この野郎…。
「ハハっ、音痴がこっち睨んでるや」
「コタくん、いつもの大人な感じがないよ」
いつもならこんなこと言わないのに…。
「小池さん苛めるのが楽しいからかな」
コタくん…。
そんなこと言ってとびきりな笑顔を貰っても嬉しくないです。