嘘つきなあなたからの恋文。
手紙は2日前の同窓会で、小田くんの親友だった綾部くんから受け取った物だ。
『小池、今まで同窓会に出席しなかっただろ?
だから渡そうにも渡せなくて困ってたんだよね。
それも小池の連絡先みんな知らないし、このまま渡せないかと思ってたよ。
これ…受け取ってもらえないかな』
そう言って中学の頃より頭の上が少し寂しくなった綾部くんから25年の時を経て手紙を受け取った。
『あの時はごめんな……でもやっとあいつとの約束が叶ったよ』
受け取った瞬間見せた綾部くんの笑顔は中学のあの頃のままの変わらない優しい笑顔だった。
「小田くん……か」
「コタくんって誰?」
「ひぃっ!あ、うわっ!」
いきなり声を掛けられ、驚いた拍子に手に当たったミルクティーが溢れた。
「あーあー、何してんだよ…」
「蒼…あんたがいきなり声を掛けてきたからでしょ?」
小さなため息を吐くと、急いでテーブルを拭く。
「ひぃって、40のババアの反応かよ」
蒼は笑うと私の目の前の椅子に腰を下ろした。
「うるさいわね。
それよりなんでこんな時間に帰って来たの?
まだ帰るには早すぎよ?サボったの?」
「今日から試験だったのお忘れ?」
「え、試験?……あぁ、そうだったわね」
忘れてた…今日からこの子中間試験だったのか。
ん?でも待てよ…。
「じゃあ私の今日の弁当作り損だったわけ?」
試験は昼までの筈だ。
「だな、でも友達ん家で少し遊んだからその時食べた」
だから損はしてないぞと息子は笑うけど、私は笑えない。
「今日はもう少し寝れたのに…」
蒼の作らなかったらお父さんにはお金渡して何処かで食べてもらったのに…。