嘘つきなあなたからの恋文。



「小池さん」


返事をしない私にもう一度コタくんが呼びかける。


「……なに?」


「こっち、向いてくれないんだね」


「……」


「いつもみたいにこっちを向いて返事をしてよ」


「……そんな恥ずかしいことよく言えるね」


「まぁ普通の中学生男子は言わないね。

でも…僕は大人らしいからね」


そう、彼は大人だ。

彼は私に向きやすい言葉を発してくれているのだ。

でも私はそんな彼とは違ってまだまだ子供で、


「向かない…向けないよ」


素直に彼と向き合えなかった。


「小池さん、早く」


「……嫌」


「そんなこと言っても、もうHR始まるよ。
顔上げなよ」


「いいよ、このまま顔下げたまま受けるから」


「僕が嫌なんだけど」


「そんなこと知らない」


なにこのやりとり…。

コタくんに反抗しつつ、頭の中では欲しいオモチャを買ってもらえなくてハブてる5歳の従兄弟が浮かんでいて

今の自分がその従兄弟と重なる。

そんな5歳の従兄弟と一緒の反抗しかできない自分にもっと嫌気がさす。



本当自分って子供だ…。

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