嘘つきなあなたからの恋文。
「小池さん」
コタくんが私の名前を呼んだ瞬間、頭に手の感触を感じた。
そしてその手がゆっくり頭の上を動く。
「落ち込むことじゃないよ、小池さんがずっと頑張ってたことみんな知ってるよ」
「……頑張ったって……本番で失敗したら意味…ないよ」
顔を置いてる袖部分が段々と濡れていく。
「最後の文化祭だったのに…」
「……最後だからあんな終わり方でも良かったんだよ」
ザワザワとクラスメイトの話し声が飛び交う中、不思議とコタくんの凛として、優しい声だけが耳に入ってくる。
「最後だから、惨敗な結果も楽しめるんだよ。
中途半端な順位貰うより全然そっちの方が潔く感じるよ。
きっと、小池さんだけだよ。
そんなに落ち込んでるのは」
「惨敗なんて…楽しくないよ。
私は…悔しさしかない」
「大丈夫、きっと何年か経ったら笑って話せるよ。
だから、そろそろ顔を上げようか」
油断していたこともあって、いきなり頭を掴まれて上げさせられた顔は
コタくんの方へ強制的に向けさせられて、
「ほら、先生も来るし、そろそろ泣き止みなよ」
「最っ低っ!!!」
無惨にも涙でグチャグチャな顔を好きな人に見られたのだ。