嘘つきなあなたからの恋文。
彼はまた驚いた表情を見せると、小さな声で「そう」っと言った。
私が笑って「ビックリした?」と聞くと、
彼は「うん」とまた小さな声で返事をした。
「そっか」
私もまたそう返事を返すと、まるで私たちを見ていたんではないかと疑ってしまう程タイミング良く待ち望んでいた放送が流れた。
《タイムアッーーープ!
30分経ちました!本部に捕まった報告はゼロです!
その結果、逃げる役の3人の勝ちです!
おめでとうございます!
景品の3千円分の食券を本部まで取りに来て下さい。
参加された皆さん、お疲れ様です。
そしてありがとうございました》
明るい声で流れた放送が終わり、理科室にまた静かな時間が流れる。
その空間を壊したのは彼だった。
「食券、取りに行こうか」
「そうだね」
「綾部も逃げ切れたんだね」
「そうだね」
返事はするものの、先を歩くコタくんが教室のドアに手を掛けた所で限界だった。
「コタくん」
「ん?」
「ごめん、先行ってて…ちょっと疲れたからここで休んで行くよ」
「大丈夫?一緒にいるよ」
いつもならやっぱり優しいと感じる行動も今はお節介という名に変化する。
「うん、ありがとう。でも大丈夫だから」
今は1人でいたい、早く1人になりたい。
「そっか。じゃあ、先行くね」
「うん」
彼が手を掛けていたドアが開く。
もう少しだ。