嘘つきなあなたからの恋文。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん、あ、待って!コタくん」
席を立ってドアに向かうコタくんを学ランから出てるセーターの裾を引っ張って引き止める。
「伸びちゃうよ、なに?」
「ボ、ボタン頂戴っ」
やっぱり好きな人のボタンは欲しい。
「……どこの欲しいの?」
「………1番心臓に近い場所」
第2ボタンが欲しい。
そう、直球に言えなくて回りくどく言った。
「…いいよ」
コタくんは学ランからボタンを引きちぎると手の平に乗せてくれた。
手の平の上に置かれた第2ボタンをまじまじと見つめる。
彼の3年間の一部…
「ありがとう、嬉しい」
大切に鞄の内ポケットに入れた。
「…じゃあ、僕にもくれないかな?」
「なにを?」
コタくんが欲しがる物なんて私持ってたっけ?
「それ」
コタくんが人差し指を向けたのはセーラー服の赤いスカーフ。
「スカーフ?こんなの欲しいの?」
「うん…欲しい」
「いいよ、はい」
セーラー服からスカーフを取ってコタくんに手に渡した瞬間、またスカーフを奪った。
「え、くれるんじゃなかったの?」
「待って!」
筆箱からマジックを取り出し、机の上にスカーフを伸ばして
そして、
【コタくん、大好き!】
本心を書いた。