嘘つきなあなたからの恋文。
「これがコタくんと私の1年間のお話よ」
「コタくんは卒アルに何て書いてくれたの?」
「…何も当たり障りのないメッセージよ。
」
「そっか…」
「…さぁ、これで話は終わり。晩御飯作らないと」
カップから手を離し、席を立って台所に立つ。
さっきまで自分の青春を話して若返った気分から一変、自分が40歳だったという現実に戻る。
「いやいや、話はまだ終わってないだろ。
なんでコタくんは泣いたの?
両思いだったんじゃないの?
そもそもなんで、その日が2人の最後だったんだ?」
「それは……」
ここまで話しておいて蒼が気になるのも無理もない。
でもこれ以上は…
「コタくんと花梨は両思いだったよ。
でも、コタくんは花梨の気持ちには応えられない理由があったんだよ」
「父さん…」
「あなた…」
会社から帰宅した夫は私が悩んだ応えを口にした。
「父さん、帰るの早くね?まだ17時だけど」
「今日は外回りして直帰だったんだよ」
「ごめんなさい、まだご飯できてないの」
「まだ早いし、お腹減ってないから大丈夫。
おつまみはある?先に晩酌してるよ」
「え、えぇ」
「着替えて来るから準備よろしく」
そう言って一旦リビングから去って行ったが、すぐに部屋着になって戻って来た夫はゆっくりと席に座った。