私の師匠は沖田総司です【下】

「蒼蝶ちゃん、大丈夫?」

「岡田さん……。はい、大丈夫です」

岡田さんに身体を支えてもらいながら立ち上がる。

組長に視線を向けると、龍馬さんが組長の腕を掴み、鋭い目で睨みつけていた。

龍馬さんの背は高いから睨みにかなり迫力がある。

でも、組長は龍馬さんに恐れるどころか逆に笑みを浮かべていた。

「坂本龍馬。僕の邪魔しないでくれる?これは僕と天宮さんの問題だから」

「そうだとしても、女相手に本気で掴みかかるような奴を放っておけるかよ。それに、蒼蝶は身体が弱いんだ。あんま手荒なことすんな」

「……は?天宮さんが身体が弱いってどういうこと?」

「組長さんはそんなことも知らねえのか」

組長がギリッと歯を喰いしばる。

龍馬さんの手を勢いよく振り払うと、腰に差していた刀を抜こうとした。

「あっ、ダメ……!」

私が止めに入るより先に、横に立っていた岡田さんが動いた。

そして、抜けかかっていた刀の柄頭を掌で抑え込み、刃を鞘に収める。

組長も私も、岡田さんの素早い動きに、驚きを隠せなかった。

「新年めでたい日のしょっぱなから、物騒な物を振り回さんどいてや。ここにいる全員、血なんて見とうない筈やで」
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