私の師匠は沖田総司です【下】
「構えなさい」
「え、あの……」
「早く!」
剣先を向けられて、私は急いで鞘に収まっている刀を抜いた。
刀の握り方が分からなくて、それっぽく握っていると、桜木さんが怪訝な表情になった。
「……何よ、その握り方。左右逆でしょ!」
「え、あ、ごめんなさい……!」
上に来ていた左手を、右手と場所を入れ替えて、再び構える。
桜木さんは歯を喰いしばり、首を横に振った。それは何かいやな予感を振り払っているように見えた。
「行くわよ!」
抜身の刀を構えていた桜木さんが、凄まじい速さで私に向かってくる。
どうしたらいいか分からない私は、とにかく力の限り刀を強く握りしめた。
すると一瞬の間を置く間もなく、鉄同士が激しく打ち付けあう音がして、握っていた筈の刀が消えた。
身を守る物が無くなった私に向かって、桜木さんが刀を振り上げる。
悲鳴もでなかった。
でも自己防衛本能が働き、反射的に手で頭を守ってしゃがみ込む。そして、これから襲うであろう痛みを覚悟して目を固く閉じた。