私の師匠は沖田総司です【下】
でも、いくら待っても痛みはなかった。
「……どうして」
震える桜木さんの声に恐る恐る目を開ける。
すると顔から10cmも離れていないところに刀があって、私は小さく悲鳴ををあげそうになった。
でも、悲鳴よりも早く刀の先に見えた桜木さんの顔を見て声がでなくなった。
……なぜなら桜木さんが泣いていたから。
悔しそうに眉を寄せ、ポロポロと涙を零していた。
「どうして……こうなったのよ。私は何のためにこの時代に来たのよ……」
「桜木さん……」
「一体貴方の身に何が起きたの……。誰が私の邪魔をしたの……」
独り言を呟く桜木さんを見ながら、私は彼女にどのような言葉を掛けたらいいのか考えていた。
……けど、何を言えばいいか分からない。
桜木さんの刀が静かにおろされると同時に、龍馬さんが庭に走り込んでくる。
「蒼蝶!」
龍馬さんが腰に差している刀を抜こうとした。