私の師匠は沖田総司です【下】
「龍馬さん、待ってください!」
「けど……!」
「私は大丈夫です。だから、待ってください」
龍馬さんは抜きかけていた刀を鞘に戻す。
私は立ち上がり桜木さんに触れようとしたけど、その手は軽く払われる。
「記憶を、失ってるんですってね……」
「……そうみたい」
龍馬さんに言われたことだから、自分ではハッキリとは分からない。でも、私は記憶を失っているらしい。
「じゃあ、どうして記憶を失ったのかわからないのね」
「うん……」
「わかったわ」
桜木さんは刀を収めると、クルリを背を向けた。
「私は刀が握れない貴方に興味はない。でも、貴方から記憶を奪った奴は許せそうにないから、何か思い出したらすぐに教えなさいよ」
「あの……」
「じゃあね」
桜木さんが歩き出そうとするけど、その前を龍馬さんが立ちはだかった。