私の師匠は沖田総司です【下】
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開け放たれた窓から穏やかな風が流れ込み、髪が微かに揺れ動く。
文机に頬杖をつきながら手元の資料を眺めていると、閉じられていた襖の外から「一ちゃん」と俺を呼ぶ声がした。
「山崎か。入れ」
「お邪魔するで~」
軽い声で手に紙の束をもった山崎が部屋に入ってくる。
正面に座ると、紙の束を差し出してきたため、俺はそれを受け取った。
「アンタも仕事があるにもかかわらず調査を頼んで悪かったな」
「気にせんでもええで。でも、どうしてもっちゅうなら、今度甘味を奢ってくれてもええけどな」
「ふっ、そうだな。今度甘味屋で好きなものを頼むといい」
「一ちゃん太っ腹~。男の俺でも惚れてまうわ~」
「その冗談は言葉だけにしろよ」
「ははは、わかっとるがな」
冗談っぽく笑う山崎に思わず苦笑してしまう。
「とりあえず、それ、今すぐ読んでみてや」
「ああ」
山崎に促され、俺は紙に書かれた文字を目で追っていった。