私の師匠は沖田総司です【下】

***

開け放たれた窓から穏やかな風が流れ込み、髪が微かに揺れ動く。

文机に頬杖をつきながら手元の資料を眺めていると、閉じられていた襖の外から「一ちゃん」と俺を呼ぶ声がした。

「山崎か。入れ」

「お邪魔するで~」

軽い声で手に紙の束をもった山崎が部屋に入ってくる。

正面に座ると、紙の束を差し出してきたため、俺はそれを受け取った。

「アンタも仕事があるにもかかわらず調査を頼んで悪かったな」

「気にせんでもええで。でも、どうしてもっちゅうなら、今度甘味を奢ってくれてもええけどな」

「ふっ、そうだな。今度甘味屋で好きなものを頼むといい」

「一ちゃん太っ腹~。男の俺でも惚れてまうわ~」

「その冗談は言葉だけにしろよ」

「ははは、わかっとるがな」

冗談っぽく笑う山崎に思わず苦笑してしまう。

「とりあえず、それ、今すぐ読んでみてや」

「ああ」

山崎に促され、俺は紙に書かれた文字を目で追っていった。
< 119 / 267 >

この作品をシェア

pagetop