私の師匠は沖田総司です【下】
「それにしても、どうしてあの日、蒼蝶ちゃんは間者の奴らを斬ったんやろ。蒼蝶ちゃんはあいつらが間者やって知ってったちゅうことか?」
「その可能性が高いな。……山崎、天宮の妙な噂を知ってるか」
「ああ~……、あの、蒼蝶ちゃんが何やらひどいことしてるっていう……」
「そうだ。山崎が調べている間、俺は天宮の噂の出所を探していたんだ。すると、この間者の隊士たちが噂を流していたことがわかった」
おそらく、間者たちは何らかの理由で天宮に正体をしられたんだ。
天宮が他言しないように、または話しても信じてもらえないように、信用を落とす噂を流し、天宮を孤立させた。
「せやけど、奴らは蒼蝶ちゃんを孤立させるだけじゃ不安があるはず。蒼蝶ちゃんも知ってるにもかかわらず、何もしゃべらんかった。……まだ何かあるはずやで」
俺はコクリと頷く。
「これは俺が噂の出所を調べているときに聞いたんだが、天宮がここから出ていく前、副長たちに向かってこう言ったそうだ。みんなはすぐ近くで命を狙われていることも知らない、と」