私の師匠は沖田総司です【下】
山崎から受け取った資料に黒猫のことが書かれていた。
どこの組織にも属さないが、金で雇われればどんな場所の情報も手に入れる凄腕の間者。
情報を盗まれた場所には必ず不吉が訪れること、そして、どこの組織にも属さない姿が自由な猫のようだということから『黒猫』という異名がつけられた。
「……最近、誰かが嗅ぎまわっている気がしてたけど、まさか斎藤はんやったなんてね」
艶子が苦々しく顔を歪める。
「降参しろ。大人しく掴まるのなら命は助けてやる」
「はっ!大人しく捕まる奴なんかおらんわ!」
艶子が手を上げると、隠れていたと思われる間者の隊士が現れる。
「やはり仲間が潜んでいたか」
柄に手を添え、体勢を低くする。
一人が刀を抜き俺に襲い掛かってくると、つられるよう全員が同時に向かってくる。
だが、大方傷が癒えたとはいえまだ日は浅い。
動きが鈍く、隙だらけだ。