私の師匠は沖田総司です【下】
最初に向かってきた男が一歩間合いに入った瞬間、素早く刀を抜き、相手の腿を斬った。
痛みで悲鳴をあげる男のわきを通り、一瞬の隙も与えず全員を急所を外して仕留める。
「山崎!」
「了解や!」
出番が来るまで手を出さないように言っていた山崎が姿を現し、前もって準備していた太い縄で間者たちを手際よく縛っていく。
「数で勝るとはいえ、負傷者。あまり俺をみくびらないでもらおう」
「っ……」
仲間を失った艶子が悔しげに歯を喰いしばる。
次第に騒ぎを聞きつけた人たちが集まってくる。そこには副長や総司たちがいた。
「斎藤、ここで何があったんだ」
状況を理解しようと副長が言った。
「縛られている隊士、そして艶子は間者だったんです」
「なんだと……」
「艶子さんが間者……」
信じられないのか、周りがざわめく。俺はその間も艶子から目を離さなかった。