私の師匠は沖田総司です【下】
そいつは天宮と同じ年ぐらいの女だった。
「貴様、何者だ」
女の只ならぬ雰囲気に思わず刀を構える。
しかし、女は刀を向けられても表情を変えない。
「私の名前は桜木小鳩。人斬り紅天女と言えばわかるかしら」
「人斬り紅天女……?貴様が?」
「そうよ。そして、天宮さんの知り合いなの」
桜木はそう言うと、俺たちをざっと見渡した。
「ふ~ん、これが人斬り集団と言われた新選組か」
桜木が可笑しそうにクスッと笑った。
「アナタたち、人斬り集団じゃなくて無能集団の方がお似合いじゃないかしら?」
「無能集団だと……」
俺の後ろで呟く副長に、桜木は笑みを浮かべたまま首を傾げた。
「だってそうでしょ?敵が潜入しているのも気付かず、逆に掌で転がされて、一緒になって天宮さんをイジメてたらしいじゃない。これを無能といわず何て言うのかしら?」
「……」
副長を含めて、誰も何も言わなかった。
いや、言えなかった。
艶子や捕縛されている隊士が間者とわかった今、天宮を裏切ったのは自分たちだと気付いたから。