私の師匠は沖田総司です【下】

そいつは天宮と同じ年ぐらいの女だった。

「貴様、何者だ」

女の只ならぬ雰囲気に思わず刀を構える。

しかし、女は刀を向けられても表情を変えない。

「私の名前は桜木小鳩。人斬り紅天女と言えばわかるかしら」

「人斬り紅天女……?貴様が?」

「そうよ。そして、天宮さんの知り合いなの」

桜木はそう言うと、俺たちをざっと見渡した。

「ふ~ん、これが人斬り集団と言われた新選組か」

桜木が可笑しそうにクスッと笑った。

「アナタたち、人斬り集団じゃなくて無能集団の方がお似合いじゃないかしら?」

「無能集団だと……」

俺の後ろで呟く副長に、桜木は笑みを浮かべたまま首を傾げた。

「だってそうでしょ?敵が潜入しているのも気付かず、逆に掌で転がされて、一緒になって天宮さんをイジメてたらしいじゃない。これを無能といわず何て言うのかしら?」

「……」

副長を含めて、誰も何も言わなかった。

いや、言えなかった。

艶子や捕縛されている隊士が間者とわかった今、天宮を裏切ったのは自分たちだと気付いたから。
< 127 / 267 >

この作品をシェア

pagetop