私の師匠は沖田総司です【下】

「……天宮は俺たちを裏切ってなどいませんでした。全て、奴らの仕業です」

話し終えても、しばらく誰も口を開かなかった。

それもしかたないだろう。

先ほどまで仲間だと思っていた人間が実は敵で、敵だと思っていた天宮は仲間だった。

残酷な真実を叩き付けられたんだ。

無理もない。

「どうして……、俺ァ蒼蝶を信じてやれなかったんでさァ……。蒼蝶、ごめん……ごめんな……」

平助が泣き崩れると、部屋の空気はさらに重くなった。

副長は顔を伏せているため顔は見えなかったが、袴をきつく握りしめ、微かに震えている。

総司は心ここにあらずというように何も言わなかった。

「……斎藤君、山崎君。本当にありがとう。君たちのおかげで新選組の情報は守られた」

「いいえ。組のお役に立てるのなら本望です」

「君たちの働きには本当に感謝している。何か、望みはあるか?」
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