私の師匠は沖田総司です【下】
寺田屋に戻った私は懐中時計の音を聞きながら、龍馬さんの着物を繕っていました。
「龍馬さん、早く帰ってこないかな……」
さっき別れたばっかりなのに、もう龍馬さんの存在が恋しいなんて、私本当に彼のことが好きなんだな。
静かに時間を刻み続ける懐中時計にそっと触れると、自然と口元が緩むのを感じます。
それからも裁縫を続け、部屋の中が薄暗くなり、手元が見えにくくなる頃、私は部屋の行灯に火を灯しました。
そして、裁縫の続きをしようと着物に手を伸ばすと、部屋の戸がガラッと開く。
龍馬さんが帰って来たのかと思いましたが、違いました。
そこに来たのは桜木さんです。
「天宮さん、ごめんだけど、しばらくここにいてもいいかしら」
「いいけど……、どうしたの?」
普段、長州藩邸に住む桜木さんはあまり寺田屋に来ません。
そんな桜木さんが私の部屋に来るなんて、いったいどうしたのでしょう。