私の師匠は沖田総司です【下】
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「総司、どこに行く」
玄関で草履の紐を結んでいると、背後から一君の声がした。
「天宮さん探しに決まってるでしょ」
立て掛けてあった刀を掴み、立ち上がった瞬間、視界がグラッと揺れた。
耳鳴りがして意識が途切れそうになる。
近頃こういったことが多い。
理由はわかってる。ここのところ毎日、稽古や巡察以外の時間の殆どを天宮さん探しに費やしているからだ。
積み重なる疲労から身体が危険信号を出しているのかもしれない。
「少しは休め」
「やだ。僕はすぐにでも天宮さんに謝らないといけないんだ」
天宮さんがいなくなった日。
僕は天宮さんではなく間者の艶子さんを庇った。
天宮さんは目で必死に助けを求めていたのに、僕はその目から逸らした。
なぜ……あの時、僕は天宮さんを助けてあげなかったんだろう。