私の師匠は沖田総司です【下】
いつも僕の近くにいて優しくしてくれたのに。
誰よりも彼女の優しさに触れていたはずなのに。
僕だけでも、彼女はやってないって……、味方であるべきだったんだ。
それなのに僕は……。
「……すきにしろ」
「ありがとう。すきにする」
見逃してくれた一君に感謝して、僕は多くの人が行きかう道にでる。
周囲に気を配りながら天宮さんを探す。
時折、人に聞いたりするけどまったく情報は集まらないし、見つけることができない。
……もしかして、もうこの町にいないのかな。
そんな気持ちが過るけど、諦めるつもりはない。
天宮さんを探し続けていると、後ろからタッタッタと一定の調子で走る軽快な足音が聞こえた。
その足音は近くまで来て、僕の横を通り過ぎる。
「え……」
横を通って行った小さい姿。
今は袴じゃなくて、女物の着物を着ているけど間違いない。