私の師匠は沖田総司です【下】
一人残された僕は、ふらつきながら立ち上がり、さっきから違和感のある鼻を拭うと血が付着した。
僕が天宮さんの記憶を奪った罪や命を奪いかけた罪は鼻血程度じゃすまないのに……。
正面を見ても、すでに坂本と天宮さんの姿はない。
僕は踵を返し、屯所へと戻った。
そして、医務室へと行くと山崎君がいて僕の顔を見た瞬間、驚いて大きく目を見開いた。
「総ちゃん!その顔どないしたん!?血だらけやん!!」
いつもは唾をつけて帰す山崎君もさすがに慌てた様子だ。
「大丈夫。これ、鼻血だから。もう大分とまってる」
「鼻血って……一体何をしたんや」
「頭突きを一発もらった……」
山崎君から水で濡らした手拭いを受取り、顔を拭く。
顔を拭いた手拭いにも赤い血がついた。
「ほ~、総ちゃんに頭突きするやなんてどこのどいつや?」
「坂本龍馬」
僕の口から出た名前に、再び山崎君は目を見開いた。
「坂本!?何でや!ちゃんと説明せい!」
「説明するから、山崎君、土方さんたちを広間に集めてよ。大至急」
「副長たちもか?」
「そう。坂本と天宮さんを見つけたんだ」