私の師匠は沖田総司です【下】
唇を離して、再び蒼蝶の顔をみれば、その顔は真っ赤だった。でも、拗ねた感じの顔は変わらない。
「むぅ、やっぱり今日の龍馬さんは変です。デコチューするなんて……」
「俺の役に立ちたいんだろ?今、おまえに触れたい気分なんだ。……だめ?」
「そ、そうですね……。抱きしめるだけなら、いいですよ」
「だったら思う存分抱きしめさせてもらう」
両腕を開けば、蒼蝶は俺の胸に寄り掛かってくる。俺はさっきよりもしっかりと蒼蝶の身体を抱きしめた。
「……龍馬さんの胸の音、懐中時計と同じ速度で聞こえる」
「は?」
「ほら」
蒼蝶が懐から懐中時計を取り出し、蓋を開ける。
カチ、カチ、と一定の間隔で刻まれる音は確かに俺の胸の音と重なって聞こえた。
「……本当だ」
「でしょ?聞いてたらすごく落ち着きます」
衿を掴んでいた手が背をまわり、俺をギュッと抱きしめる。