私の師匠は沖田総司です【下】
「天宮!俺たちは……」
「俺たちは仲間だったって言いたいんでしょ!?もう何度も聞いたわよ!でも、私は貴方たちのことなんて知らない!私は貴方たちが知ってる天宮蒼蝶じゃない!」
天宮さんは頬を真っ赤に染めて声を張り上げる。そして、とうとう彼女の堪えていた涙がボロボロと零れ落ちた。
傍らに立つ土方さんにそっと目を向ける。
悲しげに肩を震わせる土方さん。
限界だと思った僕は戸に手をかけた。
「天宮さん、部屋から出たらダメだよ」
戸を閉め、土方さんの視界から天宮さんの姿を隠す。
部屋から離れる時、土方さんは重い口でポツリと呟いた。
「きついな……」
「そうですね」
今まで親しかった人に忘れられてしまうのは、身体を傷つけられるより辛い。
しかも、僕たちを敵としかみていないことがさらに辛くて、なにより悲しかった。