私の師匠は沖田総司です【下】
師匠、決断の時です
薄暗い自室で、私は一人、部屋の中で静かに座っていた。
そんな私の目の前にあるのは、師匠の刀と龍馬さんの懐中時計。
記憶を取り戻した今。
私は決断しなければならない。
師匠か龍馬さん。
どちらの為に限られた時間と命を使うかを。
「今のままじゃ、ダメなんだ……」
あやふやな立場をやめないと、また心が迷ってしまう。
目を閉じて、今までの思い出を本のページをめくるように思い出すと、胸が切なく痛み、頬を一筋の涙が伝った。
瞼を開け、再び刀と懐中時計を見る。
もう……答えは決まってる。
手を伸ばし、懐中時計を手に取る。
鎖が揺れる音と共に、銀の冷たい感触が掌に広がった。
ギュッと懐中時計を抱きしめ、立ち上がる。
部屋の戸を開ければ、春の終わりを感じさせる生温かい風が身体を吹き抜ける。
天を仰げば、全体を灰色の雲が覆っていた。
すぐにでも空が泣き出しそうだ。
「今の私みたい……」
ポツリと呟くと、私は怠い身体を懸命に動かし、そっと屯所から出た。