私の師匠は沖田総司です【下】

鼻先が触れ合うと、また唇を重ねる。今度はさっきよりも長く、包み込むような優しいキス。

雨の中でもあたたかい唇に私はそっと目を閉じる。

労咳がうつるかもしれないとか。

人が見てたらどうしようとか。

そんな気持ちはどこかへ行ってしまう。

今は唇を通して「好きだよ」と言われているような、この素敵な瞬間を、許す限り長く感じていたかった。

名残惜しむように唇が離れると、強く抱きしめられる。

私は龍馬さんの広い背中に腕を伸ばし、しっかりと抱きしめた。

「短い間でしたけど、龍馬さんと恋人のように過ごせて幸せでした」

「俺も幸せだった」

そんな幸せな生活はもう終わる。

それがわかっているからこそ、背に回した手を離すことができなかった。
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