私の師匠は沖田総司です【下】
龍馬さんに抱えられながら、屯所へと向かう。
心なしか、龍馬さんはいつもよりゆっくり歩いているような気がした。
私の身体に障らないようになのか。
それとも、別れの時を少しでも遅らせようとしているのか。
わからないけど、私はゆっくり歩いてくれて嬉しかった。
龍馬さんの首にしがみ付く腕に力を込める。
視界は龍馬さんでいっぱいで、外の景色はみえない。
屯所へ向かう見慣れた光景を見るのが怖くて、顔をあげることができなかった。
「着いた」
龍馬さんの声に胸が掴まれたように激しく痛む。
そっと顔を後ろに向けると、遠くに新選組の屯所がみえた。
「ここまででごめん」
地面に下ろされながら、ふるふると首を横に振る。