私の師匠は沖田総司です【下】
私は伸ばしていた箸を、お雑煮が入った器の上に置いた。
「分かりました。もういいです」
「え?いいの?」
「はい。でも、これだけは言わせてもらいます。野菜を食べない人には、みたらし団子を作ってあげませんからね」
「え~~!?」
ふっふっふ、伝家の宝刀『みたらし団子』が炸裂ですよ。
私が作ったみたらし団子を食べたければ、野菜を食べるのです!
「天宮さんの鬼!」
「人は時として鬼になるんですよ。さあ、どうしますか?野菜を食べますか?食べませんか?」
「うぅぅ……」
組長がシュンとなりながら、お雑煮とにらめっこしています。
みたらし団子は食べたいけど、野菜を食べたくないという二つの気持ちが、激闘を繰り広げているようです。
いつもならここで組長が折れて、野菜をすっごくいやそうに食べるのですが、今日は違った。
組長が子犬のように目を潤ませながら、私の顔を覗き込んできたのです。
「天宮さん、お願い。今日は見逃して」
子犬組長の甘える攻撃。
すっ、凄まじい破壊力……。
可愛さのあまり私の心がキュン死にしそう。
だが、ここで負けてなるものですか!