私の師匠は沖田総司です【下】

僕は、天宮さんには感謝しないといけない。

……なのに、結果的にはその恩を仇で返してしまった。

彼女を裏切り、そして坂本龍馬から引き離したのだから。

最低な人間だと罵られても何も言えないほど酷いことをした。

けど、天宮さんを失って、彼女の存在の大切さを知り、無実な君を裏切ってしまった罪悪感から我慢できなかった。

罪滅ぼしがしたい……そんな大義名分がないと、苦しくて苦しくて、どうかなってしまいそうだったから。

唯我独尊……そんな言葉が頭を過る。

僕にぴったりの言葉だ。

チラッと山南さんの本を見る。

「僕も天宮さんに何か渡したいな……」

労咳に侵され、治る見込みのない彼女には時間がないんだ。

だからせめて、何もできない僕でも天宮さんに何かしてあげたいと思った。
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