私の師匠は沖田総司です【下】
師匠、池田屋事件です
組長から貰った菖蒲が、貰った頃よりも色がくすみ、茎を曲げはじめた頃。
蒸し暑い部屋の中で、うつらうつらと微睡んでいると、どこからか男性の悲鳴が聞こえた。
なんだろうと思って、痩せて棒のように細くなった手足を動かし、部屋から出ると、また悲鳴が聞こえる。
悲鳴は蔵の方からだとわかった瞬間、背筋が粟立った。
まさか……。
脳裏に過った予感を確認するために、壁づたいに歩き、蔵を目指す。
「蒼蝶。何でこんなところにいるんでさァ」
「平助君……」
偶然通りかかった平助君が私のところに来てくれる。
「寝てなくちゃダメですぜ。早く部屋に戻りなせェ」
「……ごめんなさい、平助君。私、早く蔵に行かないといけないの」
私の言葉に、平助君の表情が明らかに動揺したものへと変わる。
この表情の変化で、私の中の予感は確信へと変化した。