私の師匠は沖田総司です【下】
早く、行かないと。
その思いを一心に、重い体を引きずるように歩くと、腕を掴まれた。
「今は、行かないほうがいいですぜ。だって」
「枡屋の主人、古高俊太郎を捕縛し、今、土方さんが情報を聞き出そうと拷問をしているんですよね」
「!?どうして蒼蝶がそんなこと知ってるんでさァ」
私の腕を掴む手に力が込められ、普段から大きい目がさらに大きく開かれる。
「それは……ごめんなさい、話せません。でも、平助君、お願いします。何も言わずに手を離してください」
平助君は考えるように、眉を寄せていたけど、最後は手を離してくれた。
そして、私の正面にきて、背を向けて屈んだ。
「背中に乗りなせェ。歩くのしんどいだろィ?俺が蔵まで連れていってあげやす」
「でも……」
「つべこべ言わず、早く乗りなせェ」
今の平助君は梃子でも動かない気がして、私は素直におんぶしてもらうことにした。