私の師匠は沖田総司です【下】

「僕たちが初めて会った場所も桜の下だったよね」

背後から聞こえた男性の声に思わず振り向く。

そこには大学生ぐらいの男性が立っていた。

見覚えがある顔に茶色の髪。

今は着物じゃないけどまさか、この人……。

「優勝おめでとう。さすが僕の弟子だね」

一番聞きたかった言葉が、聞きたい声で聞こえた。

「師、匠ですか……?」

「うん。久しぶり、蒼蝶」

蒼蝶……。

とても懐かしい声で蒼蝶って呼んでくれた。

夢だと思ったけどやっぱりこの人は師匠なんだ。

「師匠―――!」

師匠に向かって走り出す。

でも、もう少しで師匠に抱きつけるというときに、後ろの襟をぐいっと引っ張られた。
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