私の師匠は沖田総司です【下】
「そっ、そんな可愛い顔をしてもダメですよ。組長が野菜を全部食べるまで、ここから逃がしません」
「ケチ!」
ケチで結構です!
再びやってきた睨み合いの時間。
塀の上から私たちを見下ろしている鴉がカー、カーと鳴く。
まるで「おまえらいつまでやってんだ」と言われているようです。
「むぅ……、だったら天宮さん。野菜を全部食べたら僕のお願いを1つ聞いてよ」
「お願いですか?」
「うん。そしたら野菜を全部食べる」
組長からのお願いですか……。
何でしょう。今年初のみたらし団子を作ってくれですかね。
それよりもなぜ、組長が野菜を全部食べたら、お願いを聞かなければいけないのでしょうか。
組長は大人ですよね。
詳しい年齢は分かりませんが、20代であるのは間違いない。
もう子供じゃないんですから、野菜ぐらい条件を出さず、文句も言わずに食べて欲しいです。
野菜を食べたらお願いを聞くなんて、馬鹿げた話ですよ。
……ですが、さっきダメと言ってしまったから出された条件を断りにくい。
しょうがないですね。
「いいですよ。お願いは何ですか?」
「僕と一緒に初詣に行こうよ」
「初詣ですか?」