私の師匠は沖田総司です【下】
「じゃあな。しばらくアンタに見張りをつけるで、余計なことはしない方がええよ」

遠くなる艶子さんと隊士の姿を見ながら、私は力なく地面に膝をつけた。

小刻みに身体が震える。

怖い……。

この感情は艶子さんから感じた殺気だけじゃない。

一番怖いのはこれから何が起きるのか分からないこと。艶子さんは、何をするつもりなんだろう。

あの雰囲気からして、何をしてもおかしくない。

「っ……、し……」

思わず師匠と呼びたくなったけど、すぐに私は口をつぐんだ。

他の人に助けを求めるなんて間違ってる。

これは私が自分で撒いた種だ。

私が艶子さんに見つからなければこんなことにならなかった。

全部、私が悪い。

だから一人で何とかしないと。

目に浮かんだ涙を袖で拭い、部屋へと戻る。

そしてそれから数日も経たないうちに、事件が起きた。
< 32 / 267 >

この作品をシェア

pagetop