私の師匠は沖田総司です【下】
「そうか?」
「はい」
龍馬さんはしばらく私の頭を撫でていましたが、ピタリと手をとめ、仰向けになりました。
「……もし、俺が商家や普通の家に生まれてたら、家族に俺の罪を背負わせることはなかっただろうな」
悲しみを含んだ龍馬さんの言葉に、思わず上体を少し上げました。
龍馬さんは目だけ私の方を見ると「寝てろ」と言って、私の頭を片腕で抱え込んでしまう。
腕枕をされながら私はジッとする。
しばらく無言だった龍馬さんでしたが、一息つくと、小さく語り始めました。
「俺は土佐藩の下級武士の家に生まれたが、それなりに裕福な暮らしをしていたんだ。両親がいて、兄さんと3人の姉さん、末っ子だった俺はいじられるけど楽しい日々だった。
しばらくして、俺は江戸の桶町って場所にある千葉道場で剣術の修行するようになったんだ。修行を初めて程なく、浦賀沖にペリーの黒船が来た。
黒船をこの目で見た瞬間、刀じゃ絶対に勝てないって思ったよ。刀が武器の時代は終わりだって思った。それだけ、黒船の存在が衝撃だったんだ。
千葉道場で北辰一刀流の免許皆伝を得て、塾頭にまでなったが、いつも心にはこのままでいいのかって思ってた。
このままじゃ、この国は植民地になる。それだけは阻止しないとって」