私の師匠は沖田総司です【下】
龍馬さんはここで一度言葉を切った。
「俺は土佐に戻って、家族に脱藩して国を変えたいって言った。正直、反対されると思ったよ」
「なぜです?国の為なのに……」
「脱藩は重罪だ。脱藩をすれば俺だけじゃなく、家族まで罪人になる」
「っ……」
「罪人になるって……、分かってる筈なのにな。家族は俺の背中を押してくれたよ。栄姉さんなんて、俺に刀を渡して、蔵の中で自害した。
俺は家族を巻き込み、栄姉さんの命があって生きている。だから俺は何が何でもこの国を変える必要があるんだ。
脱藩し、家族を罪人にしたのは自分が武士の家に生まれたから。でも、もし商家の家に生まれてたらこんなことにはならなかった。けど、同時に国を変えようなんて思わなかった。
今はどっちに生まれたら良かったなんて分からない。……どっちでも後悔してたと思う」
龍馬さんは私の方に身体を向けると、私を抱きしめた。
「ごめん……、しばらくこうさせてくれ」
「はい」
腕を伸ばし、龍馬さんをしっかり抱きしめた。