私の師匠は沖田総司です【下】
龍馬さんの懐中時計の秒針の音は不思議と心が落ち着く。
懐中時計があれば、艶子さんからのイジメにも耐えられるかもしれないと思ってのお願いでした。
龍馬さんは文机の上にあった懐中時計を手に取ると、私に渡してくれました。
手の中で鈍く光る銀色の懐中時計。
あの頃と変わらず、一定の時間を刻む音がします。
「本当にこれでいいのか?」
「はい。ありがとうございます」
懐中時計を胸に抱きながら頭を下げました。
「私、そろそろ帰りますね」
「ああ……」
龍馬さんは玄関外まで来てくれる。本当は新選組の屯所まで送りたいらしいけど、お断りしました。
龍馬さんがムスッとした顔になるけど、やっぱり危険なことをして欲しくないです。
「あのさ、たぶん1ヶ月ぐらいしたら帰ってこれるから。そしたらまた会おうな」
「でも……」
「場所はあの川原。雨が降ろうが槍が降ろうが以蔵の雷が落ちようが、おまえが来るまで川原に行くから来いよ。約束だからな」
「はあ」
一方的に約束されてしまいましたね。